外国人として日本チームをマネジメントする:Jim Weisser氏インタビュー PART 2

なぜ日本には電子署名サービスが必要なのでしょうか?

Jim Weisser | Co-Founder & CEO, SignTime

今回のインタビューでは、アメリカ出身の起業家で、SignTimeの共同創業者兼CEOであるJim Weisser氏に、日本で起業するために必要なことを伺いました。

SignTimeは、電子署名サービスを提供するウェブアプリケーションです。これは、署名のための文書の送信、文書の管理、再利用可能な契約書テンプレートの作成など、ビジネス運営に不可欠なオンライン要素を含んでいます。

インタビューPart 2では、日本の人材市場、シリコンバレーと日本での企業活動の違い、そしてJim氏がどのようにチームを採用し、マネジメントしているかについてお聞きしました。

Part 1では、SignTimeと日本におけるデジタルトランスフォーメーションについてお話を伺いました。


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現在の日本の人材市場についてどう感じていますか?

一般的には、かなり良い印象を持っています。人材市場は変化し、日本の終身雇用制度も変わってきています。私にとって最も重要なことは、数年前と比較して、スタートアップ企業に対する人材の供給力が格段に向上していることです。例えば、私がPBXLを創業した当時は、誰も私の下で働こうとはしませんでした。そして、興味を持った人たちは、たいてい家族に反対されていました。

スタートアップ、特に海外のスタートアップで働くことは、非常にリスクが高いと考えられていたのです。しかし、それが変わり始めたのです。今では、潜在的な採用希望者はリスク回避の傾向が弱まり、スタートアップで働くことで得られるメリットや可能性を見出す傾向が強くなっています。これは非常にポジティブな変化です。

 

採用の際、どのような点を重視しますか?

募集があるときはいつも、ポテンシャル、ニーズ、経験のどれを重視して採用するかを考えます。私個人としては、ポテンシャルを重視します。あるポジションにふさわしい経験の最低ラインは非常に低いと思いますし、「できる」よりも「やりたい」という気持ちが重要なことが多いからです。しかし、組織内の多くのプロセスを推進する人材を採用したいのであれば、私は経験を重視します。つまり、常に役割に依存するのです。

もう一つのポイントは、現実的な期待を持つことです。よく「初日から活躍できる人材が必要だ」という言葉を聞きますが、私は「それならその人を3カ月早く雇えばよかったのに」と思ってしまいます。なぜなら、それは現実的ではないからです。

また、転職回数が多い人にも興味はありません。1年で辞めてしまうような人は、私にとっては良い投資ではありません。プロダクションスピードに乗せるのに、1年ぐらいかかりますから。

日本の人材市場の良いところは、シリコンバレーのように入れ替わりが激しくないことです。5年以上在籍するのは当たり前で、3年で辞めてしまう人はちょっと怪しいと思われます。

もちろん、これにはデメリットもあります。人を雇うにしても、人が少ない分、マーケットが狭くなります。だから、常にギブアンドテイクなのです。

 

その他に採用で重視することはありますか?

もうひとつは、正しい姿勢を持った人を採用することです。日本語には「明るい」という言葉がありますが、これは活気や幸せ、ポジティブな意味合いがあります。私たちは「明るい人」を探しているのです。それは私たちにとって、とても重要なことです。

歴史的に見ると、私たちはこの点を十分に重視していませんでした。長く勤めなかった人、うまくいかなかった人を分析すると、性格が合わなかったというのが主な理由です。当たり前のことのように聞こえますが、幸せな人を雇うことが、良いチームを作る鍵なのです。

 

次に、日本で成功したアメリカ人起業家としての経験についてお聞きします。シリコンバレーと違って、日本で期待されることは何でしょうか。

日本とシリコンバレーでのビジネスの大きな違いは、タイムフレームです。シリコンバレーの人たちと日本でのビジネスチャンスについて話すと、「1四半期だけやってみて、どうなるか見てみよう」というようなことをよく聞きます。これは日本では通用しません。

シリコンバレーやアメリカの企業では、3ヶ月というのは許容範囲ですが、日本では短すぎます。歴史的に見ても、企業は四半期ではなく、半期や通期で報告します。「石の上にも三年」という言葉がありますが、これは「冷たい石も3年座れば温かくなる」という意味です。我慢と忍耐の教えですね。その考え方は、日本ではまだまだ根強いものがありますね。

 

なぜだと思いますか?企業のあり方に根本的な違いがあるのでしょうか。

日本の大企業を見てみると、トヨタ、ソニー、NTT、キーエンスなど、ハードウェアの会社が多いのに対し、アメリカではアルファベット、アマゾン、マイクロソフト、アップルなど、大企業はすべてビッグテックです。これは、日米の違いをよく表していますね。日本のSaaSに良い企業がないわけではありませんが、意味のあるグローバルなSaaS企業がないのです。日本は、どちらかというとハードウェアを中心とした製造業の文化を持っています。

そのため、シリコンバレーのように「何かを出して、壊れたら直す」というアプローチは、日本では一般的ではありません。ソフトウェアの場合、初期リリースは市場をテストするためのベータ版という位置づけが多い。ハードウェアの場合は、一度お客様に出荷してしまうと簡単に修正することができないので、そうはいきません。だから、日本では考え方がまるで逆なんです。「一度出したものは、絶対に壊してはいけない」という考え方です。この考え方は、日本経済のあらゆる分野で非常に有効です。

 

御社は日本に拠点を置きながら、シリコンバレーに開発チームを置いていますね。その仕組みと難しさを教えてください。

アメリカの技術チームと日本のコマーシャルチームとの間で、常に二重の交渉が行われています。双方とも自分たちが正しい答えを持っていると思っています。技術サイドは、「なぜ日本側が細かいことにこだわるのか」と文句を言います。

しかし、お客さんと話をするのは日本のメンバーです。だから、ほとんどの場合、本当に高い期待を持っているのはお客さんなんです。ベンダーとしては、それに合わせてコミットした納期を守らなければなりません。

もうひとつは、QA/QCをすべて日本で行っていることです。以前は、アメリカやヨーロッパなど海外で行っていたのですが、日本のお客さまには細かさが足りないことが多かったのです。現在は、そのすべてを日本で行っており、新機能が厳格なテストプロセスを通過すれば、通常、お客様との間に問題は発生しません。

 

Jim氏は、サインタイム日本チームで唯一英語を母国語とする人ですね。日本人をマネジメントする上で、文化的な課題はありませんでしたか?また、学習曲線はどのようなものでしたか?

それはとても難しい質問ですね。確かに学習曲線はありましたが、それが文化の違いのせいなのか、それとも私自身のマネージャーとしての限界のせいなのかはわかりません。これまで見た中で最悪のリーダーは、2003年から2006年の間の私でした。みんな私と一緒に働きたくなかったので、自分の行動を見つめて改めました。

私が学んだ最も重要な教訓は、間違いを犯したら、それをすぐに公表することです。「悪い知らせはエレベーターを使い伝わり、良い知らせは階段を使って伝わる」という有名な言葉がありますが、私は今でもこの言葉を強く信じていまし、チームに対してもそうするよう心がけています。

少し前のことですが、実際は私が原因だと思われることで、ベストパフォーマーの一人にみんなの前でかなり厳しいことを言いました。そこで、反省し、社内全員にメールでお詫びをしました。これは、失敗を許容するスペースと、失敗したときにどう行動するかの見本を与えることになり、チームの共感を得ました。

 

Part 3は、ビジネスを離れて、日本での子育てについてお話しします。

 

Bryan (Wahl+Case) and Jim (SignTime)

 

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