“新世代のプレミアムカード” 日本進出の挑戦記(後編)

Luxury Card アジア・日本地区代表林ハミルトンさん

Luxury Card アジア・日本地区代表林ハミルトンさん

~クレジットカード業界の革命児、ラグジュアリーカードアジア・日本地区代表に聞く~ (後編)金融業界を席巻しつつあるFinTech(フィンテック)。モバイル決済が世界的に普及するなかで、クレジットカード業界にも新たな機運が高まっています。 そんな中、最高級のコンシェルジュサービスがアメリカのエグゼグティブの間で大きな話題となっているラグジュアリーカード(www.luxurycard.co.jp)。2008年にアメリカで創業されたラグジュアリーカードは、富裕者層を主な顧客とするクレジットカード会社です。海外進出の第一弾として、2016年11月に日本での事業を開始。その事業の立ち上げを一手に引き受けたのが、Luxury Cardアジア・日本地区代表(the Head of Asia for Luxury Card)として活躍する林ハミルトンさんです。日本初のMastercard最上位商品「World Elite Mastercard」を採用し、3種類のプレミアム クレジットカード「Mastercard® Gold CardTM」、「Mastercard® Black CardTM」、「Mastercard® Titanium CardTM」を提供しています。林さんは日本事業の立ち上げにおいて、どんな困難を打ち破ってきたのでしょうか。ゼロからブランドを構築するうえでの工夫や、クレジットカード業界の今後、ラグジュアリーカードのビジョンについてお聞きしました。(前編はこちら

――日本でのブランド構築、知名度向上は、どのような戦略のもとに行っているのですか。

私たちが重視しているのは、いかにコアなファンをつくるか。そして、彼らの期待を超えられるかということです。まずは決済手段だけでなく、「ライフスタイルを豊かにするサービス」であるという世界観を構築するために、Webサイトのデザインや広告の見せ方については、ラグジュアリーブランドを参考にしました。コアなファンづくりで大事なのは「口コミ」。富裕層の通勤経路などの動線を加味した広告やSNSでの発信を組み合わせて、ターゲットへの認知を広げていきました。他のクレジットカードだと、「初年度無料」や「○○のポイントがもらえる」といったインセンティブ系のプロモーションが多い。ですが、ラグジュアリーカードでは、違う獲得戦略を実施しています。キャンペーンで誘導されて入会した顧客はロイヤリティが低い方が多いからです。それよりも、本当に自分たちのサービスの良さを感じてくれる顧客を大事にすれば、その口コミの熱の入りようが違いますし、それが熱狂的なファンを増やすことにつながると信じています。  

――具体的には、どのようにターゲットのニーズをつかんでいったのでしょうか。

役に立ったのは、ターゲットの行動を徹底観察することでした。彼らがどんなふうに仕事にとりくみ、休日をどう過ごし、どんな課題を抱えているのか。例えば日本人のターゲット特有なのは、日本の美術館に足を運び、行列もいとわないこと。しかも家族連れで楽しむ姿も多い。他国だと世界的に有名な美術館でも外国人観光客でにぎわっていることが多く、地元の人が訪れるというニーズはそれほど高くありません。つまり、日本人には学びたい、家族で知的好奇心を満たすことを楽しみたい、というニーズが高いといえます。この洞察から、東京国立近代美術館などの美術館の展示を鑑賞できるという特典を加えることになりました。このように、日本人のメンタリティーや心の機微を理解することが大事だと考えています。私の場合、革新的にカード業界として珍しいサービスを開発する根性と日本人特有の価値観について精通していたことが強みになりました。これまでにないサービスをつくるときは、アンケート調査などを実施しても、回答者は既存のマインドセットにとらわれて答えてしまいます。そのため、なかなか有益な解は得られにくいのです。また、同業の競合他社の戦略も追わないと決めていました。参考にしようとすると単なるフォロワーになってしまい、クレジットカード業界の既存の枠組みを打破することはできないと思ったためです。 

――フィンテックの浸透によりビットコインや他の決済サービスが増えているなかで、クレジットカード業界は今後どのように変化していくとお考えですか。また、クレジットカード業界でイノベーションを起こすために何が必要でしょうか。

デジタルペイメント、世界的に見て特殊な環境です。最近読んだ調査によると、日本の個人消費におけるクレジットカードの利用率は2012年時点で14%程度。韓国の60%やアメリカの24〜25%などに比べて低い比率です。他国だとApple Pay(アップルペイ)やSquare(スクエア)のように、スマートフォンを用いたモバイル決済が幅を利かせています。例えば中国では、どんな零細な店でもAlipay(アリペイ)が浸透していて、顧客はQRコードにスマホをかざして支払いを済ませるというのが、当たり前の風景になっている。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えて、日本政府は「キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上」を謳っています。こうした動向を考えると、日本でもクレジットカード業界の変化が進んでいくのはまちがいないでしょう。しかし、「日本の金融業界=保守的」という構図があるためか、世界の金融系の企業はまだ日本市場への進出にそこまで積極的ではないように思えます。このままでは日本が世界から取り残される恐れもある。そこで、日本に参入するのは難しいという障壁を、私たちラグジュアリーカードが打ち破りたいと考えています。外資の新興企業による成功事例が生まれれば、「日本の金融業界を外資企業も変えていくことができる」と考えて、進出をめざす企業が増えていくと思うのです。そうすれば、競争や協働が進み、金融サービスもさらに向上し、顧客もより大きなメリットを享受できるはずです。クレジットカード業界の枠組みにとらわれずに、こうした変革を促す先駆事例をめざしたいですね。