世界の観光客と素晴らしいグルメスポットをつなぐ架け橋【後編】

20歳で日本に留学し、ゴールドマン・サックスのプライベートバンキング部門に勤務し、スタンフォード大学でMBA留学もしていたLu Dong(董路)さん。2004年に中国に帰国し、2社のベンチャーを立ち上げた。2014年に日本に拠点を移し、起業。2016年4月にベータ版をローンチ予定の「日本美食」というアプリのベータ版を開発し、新たな挑戦に臨む。

前編は

こちら

中国

でのEコマースの会社を2社起業されていたとお聞きしました。立ち上げの経緯は何でしたか?

Lu :

2004年にアメリカから中国へ戻ってきたとき、海外留学や海外の就職で培った強みを活かして、中国にはないサービスをつくろうと思った。今でこそ当たり前となったEコマースですが、当時はタオバオがその先駆けとして、流行り始めたばかりで、オンラインで服を売買できるようなアパレルのサイトは中国には存在していなかった。そこで、カスタムメイドの独自のシャツを生産してネット上で販売するという仕組みづくりに挑戦したのです。それが「Beyond Tailors」というファッションEコマースの会社です。2社目は、オンラインランジェリーブランドに成長した「蘭繆(LA MIU)」女性の下着をオンラインで販売するサービスの会社でした。ビクトリア・シークレットというアメリカの有名なブランドがあり、その中国版なるものをつくろうとしたのです。2社を起業し、日本への移住を機に、2014年に売却しました。 

中国での起業と日本での起業とでは、どんな違いがありましたか。

Lu :

このアプリの開発に取りかかったのが2015年5月で、日本で会社を設立したのは2015年12月ですので、まだ始まったばかりではあります。ですが、現段階で、環境も文化も創業に対するアプローチもかなり違うというのを実感しています。一番は「新しい商品、サービスへの考え方」。例えば中国には、9億人のユーザーを擁するWeChatというメッセージアプリがあります。このアプリを使って支払いができ、友人同士で送金し合うことも可能です。大多数の中国人はすぐにその機能を使い始めます。「これを使うと、面白そう。可能性が広がりそう」と考えるんです。だから新しいサービスがすぐに世の中に普及しやすいといえます。一方、日本で人気のメッセンジャーアプリにもWeChatとほぼ同様の機能が搭載されています。ですが現時点ではほとんど普及していないといってよいでしょう。日本の友人に実際に説明しても、過半数が「まだみんなが使っていないから」と少し不安そうにしました。このように新サービスを取り入れるかどうかにおいて、反応がまったく違います。 

中国と日本とで、起業やベンチャーに対する考え方においては、どんな違いがありますか。

Lu :

私は中国で起業する前に、スタンフォードにMBA留学をしているのですが、中国人と日本人の卒業生の進路の傾向がまったく違うことに衝撃を受けました。勤めている会社や肩書、業種などを卒業生データベースで調べると、中国人は約5割がベンチャーにおり、4割はベンチャーキャピタルで働いていて、大企業に勤めているのは、わずか1割程度。一方、日本人の卒業生は大多数が、名の知れた大企業に勤めていたのです。つまり、いわば一流の人材の多くが「守りの世界」にいると言ってよいでしょう。現状を打ち破って新しいものをつくる人材が少ないといえます。 

会社の創立においてWahl & Caseのサポートを受けられたとのこと。その内容と効果について、お教えいただけますでしょうか。

Lu :

ケイシーさんがいなかったら、このビジネスは立ち上がらなかったでしょう。来日してすぐに、日本での起業のアイデアについて、彼に相談したら、「素晴らしい! これを実現するには創業メンバーが非常に大事になる」と助言をくれ、メンバー探しに協力してくれたのです。私も起業を通じて、いくら素晴らしいアイデアがあっても、それを実現するためには、「人」が一番大事だと痛感していました。信頼できて能力も高い人に仲間になってもらうことが非常に重要だと。 

どうやって創業メンバーを探されたのですか。

Lu :

創業メンバーは私を含めて3人なのですが、そのうち1人をケイシーさんが紹介してくれました。また、そのメンバーがもう一人の新たなメンバーを仲間に誘ってくれたのです。今後入社予定の4人の正社員のうち3人を紹介してくれたのもケイシーさんでした。また、できるだけコストがかからないオフィスを探そうと試行錯誤していたら、オフィスの一部を期間限定で無料で提供してくれることになりました。そのうえ、ビジネスモデルを改良するためのアイデアを一緒に練って、顧客開拓にも寄与してくれています。彼は私のインキュベーターであり、創業の大事なパートナーですね。 

今後のLuさんのビジョンをお聞かせください。

Lu :

まずは、日本美食によって、世界一のグルメ都市と呼べる東京と、数では世界一を誇る中国人観光客とをつなぐサービスを展開することです。将来的には、ターゲットを日本と中国だけでなく、世界にも広げていこうと思っています。中国やフランス、タイなど、他のグルメ都市も東京と同じ課題を抱えています。グルメ都市を訪れた外国人が、より良い飲食店を見つけられるようなガイドをつくり、世界的なネットワークのハブになることで、世界の観光客に喜んでいただきたいですね。