Slush Asia発起人に「次世代の起業家育成」への想いを聞く ~海外の起業家を惹きつけるコミュニティーをめざす~(前編)

フィンランド出身で、大ヒットゲーム『Angry Birds』などを手掛けるRovio Entertainment日本法人元代表のアンティ・ソンニネン氏。数多くの企業やボランティアの協力を得て、一般社団法人「SLUSH ASIA」を立ち上げました。slush1英語で開催される日本最大規模のスタートアップ・イベントSlush Asiaを運営され、若手起業家のための新たなコミュニティーづくりに挑んでいます。

Slush Asiaを入り口に、学生たちにも「起業=カッコいい」という印象を伝え、新しい挑戦をする人を増やしたいと語る彼に、Slush Asiaを始めるに至った課題意識や、今後の構想についてお話を伺いました。

アンティさんが、「日本のスタートアップの環境を変えなくては」という危機感を覚えたきっかけは何でしたか。

アンティ・ソンニネン氏(以下、アンティ):フィンランドで大ヒットしたゲームを日本に広めるため、2013年に来日したとき、海外の企業が日本に進出するときの壁を実感したのがきっかけです。日本語という言葉の壁もありましたが、何よりも、グローバル展開を見据えたベンチャーが育っておらず、他国のスタートアップの成功事例があまり共有されていないことに気づいたのです。調べていくにつれ、そもそも世界を見据えた起業に挑戦する人が少なく、良いロールモデルがほとんどいないことが問題点だと考えました。現に日本では、起業家精神を教えたり学んだりする機会も限られています。

「もっと壮大な目標を持って挑戦してもいいよ」というメッセージを発信すべきだと考えたのです。そこで、母国のフィンランドで行われている「Slush」から着想を得て、日本でもSlush Asiaというスタートアップのイベントを開催しようと決めました。

Slush Asia開催に向けて、参考にされたことや周囲から影響を受けたことはありましたか。

アンティ:大きく影響を受けたのは、Mistletoe株式会社 代表取締役の孫泰蔵さんの考え方でした。孫泰蔵さんは、「2030年までにアジア版シリコンバレーのベンチャー生態系をつくる」という目標を掲げ、国内外のベンチャー支援、育成に力を注いでおられます。

フィンランドのSlushの熱気やエネルギーのすごさを実感した僕は、ぜひこれを日本でもやりたいと思っていました。そこで、その想いを、同じくSlushに参加していた泰蔵さんに伝えたのです。彼は常に新しいことに挑戦し、現状を改善していけるという考えの持ち主。僕のアイデアに共感を示してくれ、「Slushが日本でも開催されれば、日本に大きな変化をもたらせるはず」と、背中を押してくれたのです。

それは心強いエールですね。なぜイベントという形態を選んだのでしょうか。

アンティ:日本にスタートアップを奨励する空気を醸成するには、まずはスタイリッシュで一体感のあるイベントを定期的に開催し、コミュニティーを形成することが効果的な方法だと考えたからです。イベント会場には、講演スペースと製品のデモスペースがあり、デモスペースには、国内外のスタートアップ企業の新製品、新サービスが数多く並びました。これにより、「起業は私たちでも可能」という強烈な印象を参加者に与えられると考えたのです。

また、すべて英語開催にした理由は、日本にいながらにして、起業家たちが英語でのデモを体験できる機会をつくりたいと考えたためです。日本のスタートアップは英語のデモに尻込みする傾向がありますが、Slush Asiaでのデモが、海外に打って出るときの練習になり、海外に進出する障害を減らせると見こんだのです。

日本での開催2回目となるSlush Asia 2016では、参加者が4000人にのぼったとのこと。運営の多くが学生ボランティアというのも特徴的ですが、これについてはどんな狙いがありますか。

アンティ:第一回目の運営組織は社会人がメインでしたが、2016年は学生がスタートアップの世界に参加し、起業家たちとふれあうことを重視しました。約400名のボランティアのうち、8割が学生でした。学生ボランティアは、英語を使って日本と世界の接点を増やしたいという人もいれば、日本をもっと新たなチャレンジがしやすい国にしたいという人もいて、実に多彩なメンバーばかり。

もちろん社会人中心ならば、運営のノウハウやネットワークがあるという利点もあります。ですが、次世代の起業家を育てるというミッションを実現させるためには、学生が運営の実務に関わることが、起業を身近なものに感じてもらう大事なステップになると思ったのです。何より、Slushには元々「実際に動いている人を祝う」という文化が根づいているので、それを体現しようという考えもありました。

後編につづく