芸術とテクノロジー、横断的な視点で不動産投資の常識を変えるパイオニア(後編)

――大塚さんは大学時代に情報科学の視点からの作曲理論を研究されるなど、芸術にも造詣が深いですが、こうした学際的なバックグラウンドが、今の研究開発にどのように活きていると感じていますか?世の中には何か正解らしいものがあって、それに従っていれば安心して生きていられる、でもそれは同じ人間である誰かが用意したものか、ある集団のコンセンサスによって作られたものでしかない、いちいちその正解らしいものに反抗していたら疲れますが、過去の芸術を俯瞰してみると権威的な価値観とその反抗によってイノベーションが起こる、そのパターンの繰り返しで歴史が作られていることがわかる。科学には巨人の肩に乗るという表現がありますが、客観的で明確な論理で答えが決定される世界ではピラミッドの頂点をそのまま延ばして高くしていくような発展の仕方をすることが多い。ある数学者が数学の目標は真の中の調和であり、芸術の目標は美の中の調和であり、これらのうちに働いているのは情緒だと言っていますが、無から有を生み出す行為が大脳の中核で発する情緒によるものであるならば、符号化できることはチューリングマシンで計算できるので、符号化できないこのいわば芸術的な思考領域こそが人間に残された最も人間らしい能力ではないかと思います。しかしこの領域というのは言語化しにくいことで過小評価されているし、評価されないと資源が割り当てられないので、逆により正確に価値を捉えられると優位に立てる場合があります。例えば初期のMacintoshとWindowsの考え方の違いもそこにありますよね。

前編はこちらから今回インタビューさせていただくのは、不動産投資テックのベンチャーであるリーウェイズのCTOを務める大塚一輝さん。学生時代は芸術上の問題をテクノロジーで解くことをテーマにフランスでアルゴリズムによる調性以降の作曲理論について研究。帰国後独立し多数のシステム開発や事業立ち上げに関わった後、2015年にリーウェイズ株式会社にCTOとして参画、次世代不動産投資プラットフォーム「Gate.」を開発されました。そんな異色のキャリアを持つ大塚さんに、不動産投資×テクノロジーにどんな可能性があるのか、学際的なバックグラウンドが仕事や研究にどう活きているかといった点をテーマにお話を伺いました。――確かに世の中は答えのない問題ばかりですね。例えば連続であることをどう表現するかという問題があって、デデキント切断という方法を使うと数理的に説明できるんですが、パースという同時代の科学者は全く違った概念での真の連続体というものを考えていて、これが面白い。でもそれを伝えようとしても実数、つまり従来の枠組みでは表現できない。説明する言語が存在しないので正確に表現できない、というときに、だったら新たな表現手段をつくってはどうか、と考える文化はイノベーションが生まれやすい。日本社会はすでに答えとされているものへの執着心が強くピラミッド的発展に資源が分配されやすい傾向にあると思います。小学3年生の文化祭のときに”未完成問題"という、漢字を補完して完成させる問題を配ったのですが、あえて複数の正解をつくれるように作っているのに、答えがいくつもあると文句を言われました。小3の段階から問題には唯一の答えがあるべきという価値観がつくられているとしたら恐ろしいですよね。――多くの優れた作品は言葉にできない感情を形にしようとした結果でもありますね。極めて価値の高いことは往々にして言語化できないですよね。僕は仏教が好きで仏教は釈迦が体験した悟りの境地を共有することが目的ですが、そのためには理屈も大事だけど理屈だけではだめで座禅もしてください、となります。悟りの体験は言語化不能なので、この通りにやれば悟りが開けます、という教科書が書けない。ソフトウェアも最終的な優位性は言語化することが難しい。LINEがなぜ流行っているか、と言われてここがこうでこうだから、と説明したところで、大体わかっていることか、一般化された部分に行き着いて、あまり意味ないじゃないですか。結局大脳の中核部分で起きていることなので、座禅を組み続けるしかない。――大塚さんは、正社員という道を選ばずにご自身の道を切り開いておられます。こうした方法を他の方にも薦めますか?人それぞれ好きなようにするのがいいと思いますが、正社員というのはひとつの契約上のフォーマットなので、これほど情報が発達しライフスタイルが多様な社会においてあるひとつの契約フォーマットが圧倒的に用いられているというのは不自然とも思います。契約とは関係性を規定するためのもので、関係性は相手によって異なるのが当然ですね。なので僕にとって関係性に応じて契約を定め、結ぶことはあまりに自然なことです。学生の頃に映画を撮ったことがあります。そのときに仕事のイメージが見えました。まず目的があり、資本と人を集め、実行し、世に出し、利益を分配する。目的がすべての先に立ち、チームは目的のために最適化される。黒澤組が作品の度に少しずつ編成を変えていくようにですね。そういう集団はあくまで個人の集合体であり、個人が集団それ自体よりプロジェクトと直接結びつく方が都合がいい。集団でなく目的を介したネットワークです。社会が付加価値を追求していく過程で個人のクリエイティビティにより資源を割くようになるにつれ、そうした傾向は強まると思います。――最後に、今後のビジョンをお聞かせください。今日より明日がよくなることを続けていきたい。物質はやがてなくなりますが、普遍的な情報は文化として生き残る、そういうものをつくりだすために生きていきたいです。