働き方改革の追い風に。「オンライン営業職」のクラウドソーシング「タクセル」(前編)

プロフィール: 田中 亮大さん

「大切にできることを大切にできる働き方を」というスローガンのもと、タクセル株式会社を2016年に設立した田中亮大さん。member_ceo20〜40代の主婦の方を中心に、子育てをしながらも在宅で仕事をしたい方と、非対面での営業活動に力を入れている企業とをつなげる、インサイドセールス専門のクラウドソーシングサービス「タクセル」を12月に正式リリースしました。このサービスが広まれば、訪問しない営業スタイルであるインサイドセールスを日本に浸透させる契機となるかもしれません。タクセルに込めた想いや課題意識、事業を成長させるための工夫などをテーマに、インタビューさせていただきました。


――タクセルのサービスについて、初めてお知りになる方に向けて教えてください。

田中 亮大さん(以下、敬称略):タクセルは、インサイドセールス専門のクラウドソーシングサービスです。今までのクラウドソーシングは、エンジニアやデザイナーなど、ITスキルが高い人向けの業務がほとんどだと気づきました。そうでない人は、自分の経験や専門性を活かした仕事を見つけることが限りなく難しい。そして、セールスをクラウドソーシングで行えるプラットフォームは日本にはないのが現状です。そこでまずは、ITスキルによらない、営業領域でのクラウドソーシングという場を確立しようと、タクセルを立ち上げました。

また、海外に目を向けると、インサイドセールスという非対面での営業スタイルが主流となっており、日本国内でも導入企業が増えてきました。非対面ならば、場所にとらわれる必要がないので、リモートワークが可能ですし、クラウドソーシングとも相性がよい。インサイドセールスを取り入れ、分業化を図れば、オンライン商談やリスト収集などといった非対面業務を自社内で抱え込まずにアウトソーシングできます。

私自身がインサイドセールスに8年間携わり、役員の家田佳代子がテレワークの第一人者です。そのためインサイドセールスとテレワークの両方で知見と実績を蓄積してきたという自負があります。だからこそ、タクセルは、働き手に対しては「オンライン営業職」という新しいカタチの働き方を、企業に対してはインサイドセールスという最先端の営業スタイルを提供していくと決めました。

――タクセルを利用することで、クライアント企業はどんなメリットが得られますか。

田中:日本国内ではインサイドセールスはまだ黎明期で、どの企業も模索段階にあります。そんな中、最初から大きな予算を組んで、自社内の人員でトライアルを行うことは敷居が高いでしょう。その点、クラウドソーシングサービスのタクセルを使えば、必要な時に必要な人材をスピーディーに集め、プロジェクトを開始できます。クラウドソーシングの性質上、通常の営業代行会社を利用するより、費用が圧倒的に安い点も大きなメリットになりますね。

――そもそも日本でインサイドセールスの認知度や浸透度が低い理由は何だとお考えですか。

田中:一つは、昔ながらの義理・人情の文化というか、「まずは直接会って信頼をつくらないといけない」という感覚が日本企業に残っていることですね。より根本的な理由としては、国土が狭いので、クライアント先に訪問しようと思えば訪問できてしまうという地理的要因があります。一方、例えばアメリカだとサンフランシスコとワシントンのように距離があれば、「じゃあSkypeかFacetimeで打合せをしましょう」となり、クライアント側もリモートによるセールスを普通の選択肢ととらえています。

また、日本の場合、ITツールを活用するリテラシーを全員が備えておらず、Skypeなどソフトのインストールが必要になり、インサイドセールスの障壁になっていました。ですが、前職で開発したベルフェイスのように、5秒でつながるWEB会議システムが広まっていけば、この問題はおのずと解消されていき、インサイドセールスが日本でも浸透していくでしょう。

――この事業のきっかけは、ご自身の子育て経験だと伺いましたが、どんな課題意識を持たれていたのでしょうか。

田中:日本には、「働きたくても、機会が限られていて働けない」という人と、「働き過ぎて、家族やプライベートといった大切なものがないがしろになっている」という人の両極端なケースが多いと感じています。私自身は、過去に長時間働き過ぎた経験から、「本当に大事にしたいものは何か」と、働き方を見直すきっかけを得ましたが、理想と現実とのギャップを感じながら、モヤモヤとした思いを抱えている人も少なくないはずです。

今軌道に乗せるべきは、セールスのクラウドソーシングですが、その先にめざすのは、日本全体の「働き方の改革」です。タクセルで働く人、タクセラーが数百、数千、数万人と増えていき、リモートワークで働いていく。こうした成功モデルをつくることで、企業にも「柔軟な働き方で高い生産性を実現できる」と気づかせられると思うのです。

そうすれば、働くチャンスが少ない子育て中の方にとどまらず、長時間労働で疲弊している人たちの働き方を是正していくことが可能になる。タクセルのノウハウを惜しみなく開示することで、こうした考えに賛同してくれる会社を増やしていきたいですね。

――タクセラー候補となる方に対して、どのように認知を広げているのでしょう?

田中:現時点では、クラウドソーシング会社と提携して、インサイドセールスに興味を持っている方を紹介していただいています。あとは地方の求人誌への広告掲載を考えています。実はコールセンターで働きたい方の潜在ニーズは地方でかなりあるんです。大手コールセンターが進出していない都道府県にタクセルの広告を打てば、都内と比べてかなりリーズナブルに認知を広げることができます。

タクセラーの報酬はもちろん全国どこでも一律です。そして、在宅ワークなどのリモートワークが可能なことにくわえ、「週3・週4勤務」といった、時間の柔軟性も確保されているとなると、宣伝費を多大にかけることなく、多くの方が応募してくださると見込んでいます。現に東京でテスト的にタクセラーを募集したときには、わずか1週間程度で150人もの応募がありました。「地方にいても都道府県ごとの賃金の差がなく、経験やスキルを活かして働ける」という点が、自然とタクセラーのターゲット層に響くのだと考えています。

(後編につづく