ソーシャルセクターをテクノロジーで支える。新たなマーケットの開拓者(後編)

NPO、ソーシャルベンチャー向けのITコンサルティング事業を主軸とする株式会社カルミナ。ソーシャルセクターのテクノロジーカンパニーという、日本では未開拓の分野にまい進する安藤昭太さんにお話を伺いました。前編では、どんな課題意識のもとに会社を立ち上げたのかという経緯や、自社のシステムを活用して社会課題の解決に寄与した事例について取り上げます。

(前編はこちら) 

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ソーシャルセクターでテクノロジーを活用する競合他社が日本にはほとんどいないという点について、どうお考えですか。安藤:

競合がいないのは、2つのパターンがあると考えています。1つは、その市場が全く認知されていない「ブルーオーシャン」というパターンです。そしてもう1つは、すでにいくつかの企業が参入したけれど失敗したパターンです。未知数な面もありますが、現在、カルミナは営業しなくてもオファーがきていることからも、1つ目のパターンの可能性が高い気がします。実はアメリカやイギリスでは、ソーシャルセクター向けにITソリューションを提供する「ノンプロフィット・テクノロジー」という業界が存在し、IT人材の活用度など、マーケットにまつわる統計データがすでに蓄積されているのです。しかし、日本ではまだまだこれからです。ITによる課題解決という切り口に絞ると、NPOも中小企業も大きな差はないので、中小企業向けのノウハウを駆使すれば、参入障壁は実はそこまで高くないと感じています。私たちの第一目標は、この分野のマーケットをつくることなので、競合が増えていったほうが望ましいですね。いずれは、NPOがシステム導入を検討する際に、相見積もりをとるのが当たり前になれば、ソーシャルセクター全体のITリテラシーも高まると期待しています。 

最近では日本でもクラウドファンディングなどが盛んになってきていますが、より気軽に寄付する文化はどうすれば育っていくとお考えですか。

安藤:

認定NPO法人

フローレンス

代表の駒崎弘樹さんが語っていた、「寄付は投資」という言葉が広がっていけばいいなと思っています。この「投資」には2つの意味が込められています。例えば、動物愛護の団体に寄付したとしたら、動物保護の課題に興味があるという意思表明になります。それは、その社会課題についてもっと世間に知ってもらうための確実な投資になります。これが1つ目の投資の意味です。そして2つ目は、「自分に対する投資」という意味です。私は会社員時代から、児童養護施設の子どもたちに勉強を教えるNPOに毎月寄付をしています。そして、日本の子どもたちの現状について書かれたメールが定期的に届く仕組みになっているのです。すると、子どもの虐待などのニュース見たときに、関連情報にふれていなかったときと比べて、問題への強い関心が生まれるようになりました。こんなふうに、社会課題へのアンテナが立ち、当事者意識を持てるようになったのは寄付を始めたおかげだと思っています。 

寄付には2つの投資の役割があるのですね。

安藤:

アメリカではキリスト教の宗教観が根強いので、収入の数%を寄付する文化があります。そのため、「寄付するか、しないか」ではなく、「どの団体に寄付するか」という発想から始まります。こうした発想が日本にも根づく一助となるべく、実はカルミナでも、信頼できるNPOに、より簡単に寄付できるサービスを開発しているところなんです。今だと、寄付をしたいと思っても、団体を探すのも、その団体が信用できるかどうかを調べるのもなかなか大変ですよね。NPO側も「安心して寄付してもらう」ための宣伝に負担がかかっています。そこで、「寄付したい人に定額料金を払っていただき、団体の透明性や新奇性などの基準によってカルミナが厳選したNPOにそれぞれ、いただいた寄付金を提供していく」というサービスがあれば、寄付者とNPO双方にとってメリットがある。いわば「投資信託のソーシャルセクター版」ですね。 

それは応援したい団体を選ぶときに役立ちますね! 最後に、今後のビジョンを教えてください。

安藤:

最終的なビジョンは、ノンプロフィット・テクノロジーのマーケットを創出することです。ITの専門家だけでなく、人材紹介やデジタルマーケティングのプロ、広告代理店などがソーシャルセクターにもっと参入していけば、社会課題を解決する手立てが新たに生まれていくはずなので、そうした世界をつくっていきたいですね。この数年で、先ほどお話した「ITで既存業務の効率化をめざす事業」を収益源にしつつ、「ITで新しい価値を生み、課題解決に寄与する事業」にどんどんチャレンジをすることが目下の目標です。まずはカルミナが「儲かる仕組み」をつくっていくことが、マーケット創出の第一歩になりますから。そして、ITスタートアップにある仕組みをソーシャルセクターに持ち込むことも、大事な使命の一つだと考えています。ITスタートアップには、VCやエンジェル投資家がたくさんいるので、早くに失敗して、事業を磨き上げるリーンスタートアップが可能なので、成長が非常に早い。もしもソーシャル版のVCやエンジェル投資家が日本で増えていけば、「その事業が社会にどれだけ貢献するか」という基準で資金調達が行われ、ソーシャルセクター全体が大きく成長していくと考えています。 

非常に鼓舞されるお話をありがとうございました! カルミナのビジョンの実現を願っています。