• テク業界トレンド
  • 当社関連ニュース

クライアントのビジネス・トランスフォーメーションを成功に導く社内起業家(前編)

クライアントのビジネス・トランスフォーメーションを成功に導く社内起業家(前編)


KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するメンバーファームのグローバルネットワーク。その日本におけるメンバーファームのKPMGジャパンは、上記の専門的なサービスをクライアントに提供し、企業の広範な活動を支援するプロフェッショナル・ファームです。

KPMGのディールアドバイザリー部門にてパートナーを務めているポール・フォード(Paul Ford)さんは、これまで数多くのクライアントに対してインターネット/ソフトウェア事業のM&A、事業再編・事業再生の戦略策定と実行を総合的に支援してきましたが、現在はそれと並行して、クライアント企業や自社を取り巻くビジネス・トランスフォーメーションを見据え、それに対応するための新規事業プロジェクトに取り組んでいます。社内起業家(イントラプレナー)としての新たな挑戦に至った背景は何なのか。社内起業家として成功するための秘訣とともにお聞きしました。

                  KPMGのポール・フォード(Paul Ford)さんのモチベータープロフィール

Attunedのモチベータープロフィールについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください


――ポールさんがKPMGの社内起業家として、新規事業に取り組まれるようになった背景は何ですか。

まずこれについて語るには、ビジネス・トランスフォーメーション(経営革新)の重要性が高まっているという、より広大な文脈を共有する必要があります。私たちのクライアント企業の中には、デジタル化を進めるにあたり、アナログかデジタルかという二択を迫られていると誤解しているケースが多々あります。しかし、実際にはデジタル化を含めたビジネス・トランスフォーメーションは、徐々に起こるべき変革です。

この約5年間で、収集できるデータの量や種類、そしてデータ分析のテクノロジーは指数関数的に発展を遂げています。顧客行動や工場・設備の稼働率といった、これまでは技術的・費用的な問題で入手できなかったデータを得ることができるようになりました。そのおかげもあり、正確かつタイムリーな改善や提案に活かせるような下地が整いつつあります。

 

――こうした大きな変化が前提となっているのですね。

はい。そのうえで、私が社内起業家として新しいプロジェクトを始めるようになった背景は、主に次の4点です。1つ目は、新しいテクノロジーを理解し、顧客へのより効果的なソリューションにつなげる必要があること。

2つ目は、業界の境目が曖昧になるにつれ、クライアント企業も自分たちのドメインや競合他社を再定義する必要があること。たとえば、IoTのセンサーの登場により、コマツは、農業機械という設備を販売するビジネスモデルから、顧客の利用データを追跡して、機器のメンテナンスや生産性向上をサポートするビジネスモデルに転換しています。これは競合他社の顔ぶれが変化することを意味します。

3つ目は、ムーアの法則のとおり、こうした新しいテクノロジーを利用するコストが劇的に下がり、その性能が飛躍的に向上したことです。以前はソフトウェアサービスを提供するために試作品をつくって実験するにしても、高額なサーバーや開発ツールをそろえなければなりませんでしたが、今はアマゾン等のクラウドサービスや、オープンソースの開発ツール等を活用できるので、開発コストが大きく削減されました。但しこれは、スタートアップ等による新規参入の障壁を下げるので、これまでと違う分野から競合他社が生まれてくる可能性も高まったといえます。

 

――なるほど。開発コストの低下が機会にも脅威にもなりうるのですね。

その通りです。4つ目は組織内で新しい人材が欠かせなくなったこと。KPMGのような監査やアドバイザリーを専門とする会社においては、テクノロジー関連のスキルセットや幅広い業界の知見、オープンイノベーション等に精通した人材がより求められるようになり、必要な人材の要件が多様化しています。

こうした4つの大きな変化をおさえながら、私が担うのは次の2つの役割です。1つはプライベート・エクイティ(PE)・ファンド・セクターのヘッドとして、クライアントがM&Aや事業再生を通じてビジネス・トランスフォーメーションを成功できるよう支援すること。そしてもう1つの役割は、KPMG自身のデジタライゼーションを推進すること。それを実現させるために、新規事業をスタートさせているのです。

 

――その新規事業の内容について可能な範囲でお聞かせください。

現在取り組んでいるのは、これまで全く解析されてこなかったデータや、かつては分析が困難だったデータから、深いインサイトを得ることを可能にするツールの開発です。

例えばこれまでは、投資先が好調かどうかを判断するには、財務諸表等から大まかに分析し判断するケースが多かった。ですが今では、個々の取引レベルのデータに基づく、より詳細な分析が可能になりつつあります。

このようなツールが開発できれば、それは私の担当領域であるPEファンドのクライアントの成功に寄与できます。例えば、クライアント企業の投資先(ポートフォリオ・カンパニー)それぞれのキャッシュフローをリアルタイムに解析し、投資先が効果的な資金繰りを行えているかを観察することができるのです。

 

――こうした開発にふさわしい人的リソースをどのように獲得しているのでしょうか。

実は5年前と比べて、KPMGジャパン内でも大きな変化が生まれています。当時は人材のほとんどが公認会計士でした。しかし今では、従来の会計士にくわえて、データサイエンティストや機械学習のエキスパート、ソフトウェアを開発するエンジニアなど、人材や、彼らの有する技能が多様になってきました。これらの多様な人材の専門性をうまく融合し、クライアント企業のM&Aの成功率を高めること、また買収した会社の管理を効率的に行えるようにすることが、私の現在の取組の重要なゴールです。

近年、新規市場への参入やシェアの拡大、事業の多角化といったさまざまな理由からM&Aの件数は増加する一方です。しかし3兆ドル規模におよぶM&A案件のうち、半分以上が失敗に終わっているといいます。私たちが開発中のデータ解析ツールを応用することは、この成功確率を少しでも上げることに貢献すると思いますし、企業の利益の向上、ひいては社会全体への大きなインパクトにつながると予測しています。

後編につづく