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シニア層や女性のMRの柔軟な働き方を促す医療ベンチャー ~医療従事者と患者のNo.1 プラットフォームをめざす~【前編】

MRが電話とオンラインで医師と効率的に話す仕組みを提供するエンタッチ株式会社。代表取締役社長のマーティ・ロバーツさんに起業の経緯や、サービスの特徴、今後のビジョンについて詳しくお話を伺いました。

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マーティ・ロバーツ
臨床心理学博士。Hofstra大学大学院卒。元セジテムジャパン社長。医療業界のデータとソフトウエアサービスのリーダーとして活躍。2015年8月にエンタッチ株式会社を起業。

 

 

 

株式会社エンタッチを起業した理由は何でしたか。
マーティ・ロバーツ氏(以下、マーティ):私は2007年に来日し、エンタッチを起業する前に、医療業界のデータとソフトウエアサービスの会社、そして市場調査に関する会社を運営していました。そのとき、MR(医薬品情報を提供する営業)と医者との情報共有があまりに非効率な現状を目の当たりにし、双方がより効率的に話す仕組みづくりが必要だという課題意識を持ち始めたのです。
製薬業界は、激化するグローバル競争の真っただ中におり、日本政府からジェネリック医薬品のシェアを、2020年~2022年までのできるだけ早い時期に80%以上にまで引き上げるという目標を課されるなど、厳しさを増す一方です。そんなさなか、数千人規模のMRを雇用していた大手製薬会社は、人件費削減を余儀なくされています。これまでフルタイムで働いていたMRたちの再就職支援という課題も今後深刻になることが予想されています。
一方、MRと医師の現場に目を向けてみると、訪問規制などによりMRは多忙きわまる医師にアポイントを取って日中に面会時間をとることがますます難しくなっており、待ち時間に多くを費やし、適切に情報を伝えづらい環境におかれています。しかし、新薬の情報は次々とアップデートされるので、医師たちは最新の情報を得たいという強いニーズを持っています。
こうした現状にメスを入れるため、医師への情報提供のマルチチャネル化を進め、MRと医師がより効率的に話せる仕組みを構築したいと思い、起業を決意しました。

 

エンタッチのサービス「e-Touch」の概要を教えていただけますか。
マーティ:具体的なサービス内容は、医師が都合のよい時間にMRと予約を取り、 電話とオンラインで医薬品情報を提供するというものです。医師は、診察前や診察後を含む6時から23時まで好きな時間に、自分の興味のあるセッションをエンタッチのスケジュール画面から選び、予約します。すると、そのセッションを提供する経験豊富なMRが予約した時間に電話をかけ、15分ほどのセッションが行われます。また、必要な資料は画面上で共有できます。一方向な医療者向けポータルサイトとは違い、医師が経験豊富なエンタッチの専門MRから、1対1で医薬品の情報提供を受け、自由に質問や相談ができるという点も、他のサービスや従来の情報収集チャネルでは得られなかったメリットです。

また、医師が薬の情報をもとに、処方の決断に至るには、正確な情報を提供することはもちろん、MRが医師といかに信頼関係を築くかが肝となります。処方の決断というと、MRと対面で数分話したほうが効果的に思うかもしれません。ですが、対面の説明と、電話と画面上での説明という2つの方法について、それぞれ処方にまでこぎ着けたケースを比較したところ、後者のほうが、明らかに成功率が高いことが、私たちの調査で判明しました。つまり、電話やオンライン上でも信頼関係を構築できるのです。また、エンタッチに登録したメディカルパートナーに、より質の高い情報提供につながるトレーニングの機会も提供していることも、その後押しとなると考えています。

 

エンタッチに登録するメディカルパートナーの主なターゲットはどんな方々ですか。
マーティ:主に2つのターゲットに絞っています。1つ目は、MRとして豊富な経験を積み、定年退職をこれから迎えようとするシニア層です。そして2つ目は、育児によりフルタイムでの製薬会社への再就職が難しいと感じている20代後半30代の女性です。いずれも、中枢神経領域や循環器領域、がん領域など、領域ごとに高い専門性を持ったMRであることが前提です。
彼らの多くは、優れた専門性を磨き、経験を積んできたものの、育児や介護、そして健康上の理由など、さまざまな背景により、働く時間や場所の制約があります。また、今後のライフプランを考えたときに、働く時間や場所を自分で決めたいというニーズを持っているMRも多数います。こうした方々の中でも第一級の知見を持つ方に登録を呼びかけていきたいと考えています。

 

女性の活躍の機会を増やすというところに着目するようになったきっかけは何でしたか。
マーティ:私が代表を務めていた市場調査の会社では、多くの女性従業員が活躍していました。彼女たちの状況を見ていると、いくら育児・介護休業法などの法律ができていても、育児と仕事を両立して働けるようなサポートが、社会全体ではまだまだ整っていないと感じていました。子育てを理由に、優秀な人材が半分以上、仕事を辞めてしまうという現状に対し、skypeや電話などオンラインツールを駆使して、彼女たちが専門性やスキルを活かせる場をつくることも、私たちの事業におけるミッションの一つだと考えたのです。
今後は、育児や介護をはじめ、男女とわず「限られた時間で働く」ことを選ぶ人が増えると思います。そこで、優秀な人材が時間や場所にとらわれず活躍する機会をつくることは、企業にとっても急務だと考えています。事実、2016年5月時点でエンタッチに登録しているメディカルパートナーからも、「時間や場所を問わず、専門性を活かして柔軟に働けることに価値を感じている」という声を多くいただいています。

 

それは素晴らしいですね。

 

(後編につづく